髄膜腫 meningioma: 頭の中にできる良性腫瘍の中で最も多くみられます。頭蓋内腫瘍の20%とグリオーマと同じくらいの発生率です。
成人に圧倒的に多く、小児は1.7%、40-59歳に好発(51.1%)します。女性に多い腫瘍です(1.7倍)。
発生母地はくも膜絨毛で頭がい骨と脳の間の膜にできるため、骨に接してできることが多い腫瘍です。
多い順で、傍矢状部(頭の正中線のそばにでき静脈洞にくっついているもの)、大脳鎌(脳の左右の仕切りの大脳鎌にできるもの)(以上併せて24%)、大脳半球穹窿部 (18%)、蝶形骨縁(18%)、嗅窩(10%、臭いがわからなくなる)、鞍結節 (10%)、後頭蓋窩 (9%、小脳橋角部、小脳テント、斜台、小脳半球部、大孔)、側脳室 (2%) の順です。ただし硬膜に付着部を持たないものもまれにあります(側脳室、deep sylvian、第三脳室前半部、第四脳室)。
頭部レントゲン像では、骨増殖や骨破壊がみられることがあります。
脳血管撮影では大部分は外頚動脈硬膜枝より血液供給を受けます。太陽光線のような外頚動脈系からの放射状の栄養血管像(sun-burst appearance)がみられます。ゆっくり増大した腫瘍により脳表血管が著明に進展されちょうど腫瘍辺縁をとりまくように走行している腫瘍血管が見られることがあります。
髄膜腫の周囲に脳浮腫が引き起こされます。
症状は、腫瘍圧迫による脳障害(場所によりまちまちです)とてんかん発作(腫瘍周囲脳の長期にわたる圧迫壊死が原因で引き起こされる)です。
周囲脳浮腫を伴うような長径2.5cmを超える髄膜腫は手術摘出を考えます。再発腫瘍に対してはガンマナイフやサイバーナイフなどの定位放射線治療が有効です(80%で腫瘍の増殖をおさえます)。
髄膜腫の術後再発の病理での予測に関しては「髄膜腫腫瘍倍加時間とMIB-1」をご参照ください。
側頭下窩から中頭蓋窩にできた巨大髄膜腫の症例報告は
病理所見
①meningotheliomatous(syncytial,meningothelialあるいはendotheliomatous)最も多く50%,meningothelial cellが密に上皮様配列を成し、光顕で細胞間が不明瞭で、あたかも合胞体syncytiumを形成しているかの外観を与える。核内空砲と同心円状配列whorl formationが特徴。whorlはしばしば硝子化、石灰化(砂腫psammoma body)し時にアミロイドの沈着を見る。
②fibrous(fibroblastic);線維腫に非常に似ており、長い紡錘形の細胞がstreamないし渦巻き状に配列しているが膠原線維はなく見かけだけである。電顕でmeningothelial cellの特徴が観察。
③transitional(mixed) ;meningotheliomatous meningiomaの部分とfibrous meningiomaの混在。①と③で全体の80%前後を占める。
④psammomatous ;石灰化腫瘤=砂腫psammoma bodyが主体を占めるもの。発育は極めて緩徐。
⑤angiomatous ;meningotheliomatous typeを基本としながら、著明な血管増生を伴う。
⑥hemangioblastic ;著明増生血管の間にfoamy cellの増殖が主体を成し、hemangioblastoma類似の組織像を示すが、どこかにmeningothelial cellの特徴を観察し得る。
⑦hemangiopericytic ;豊富な血管と膠原線維網を持ち、hemangiopericytomaの組織像を示すが、どこかにmeningothelial cellの特徴を有する。臨床的には悪性像を示し2-3年で再発する。20-40歳の若年に多い。⑤-⑦をまとめてangioblastic meningiomaと総称することがある。
⑧papillary ;乳頭構造を有する稀な腫瘍、小児-青年期に発生。極めて悪性。
⑨anaplastic (malignant);細胞密度が高く核の異形分裂像が多く、しばしば脳実質への浸潤像や壊死巣が観察される。meningiomaの3-10%,小児髄膜腫の20-30%。男性に多い。
⑦⑧⑨は悪性腫瘍と位置づけられる。
腫瘍内にのう胞を形成するcystic meningiomaは全髄膜腫中の2-4%です。