下垂体は大脳の下にサクランボのように垂れ下がり、トルコ鞍と呼ばれる骨のくぼみに収まっています。トルコ鞍の下は薄い骨をはさんで副鼻腔があり、下垂体の茎の部分の両側に視神経が交差しています。大脳の中の視床下部といわれる部分で作られた下垂体ホルモン(成長ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、服地に皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン)が下垂体にあつめられて、必要に応じて静脈の中に分泌されます。下垂体腺腫という病気は、下垂体の中の細胞が増えて、下垂体ホルモン(の一部)をたくさん分泌したり、となりにある視神経をおして視野を狭くすることで発症します。全脳腫瘍の15~19%を占める比較的多い腫瘍です。プロラクチノーマは女性に多くみられます。
プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)を出すものが一番多く(40%)、次に成長ホルモンを作るもの(20%)、副腎を刺激して、ステロイドをたくさんださせるもの(クッシング病といっています。数%)のほか、ホルモンを出さないものが 40%あります。
このうちプロラクチン産生腺腫はパーロデルやカバサールという薬がよく効きます。特にカバサールは1週間に1回内服するだけでいいので非常にうれしい薬です。これらの薬が有効であることがわかってからはプロラクチン産生腺腫を手術することはほとんどなくなりました。
成長ホルモン産生腺腫(子供の時におこると巨人症、おとなになっておこると末端肥大症になります)はパーロデル著効例は約30%、有効例20%、無効例はは約15%です。

サンドスタチンという薬(成長ホルモン産生抑制ホルモン)が成長ホルモン産生腺腫に有効なことがあります。
手術は鼻の中からもしくは上唇の裏を切って、副鼻腔にはいりそこからトルコ鞍にはいり腺腫をとります。顕微鏡下に腺腫をとることが以前はよく行われていましたが、最近は内視鏡を使用して腺腫をとるのが主流になってきました。そのほか下垂体腺腫が脳の中に大きく入り込んでいる場合は、開頭して腺腫をとることもあります。
なお、三井記念病院には神経内視鏡がないため、手術が必要な場合は帝京大学下垂体内視鏡手術センター(松野彰教授)もしくは虎の門病院間脳下垂体外科(山田正三副院長)に紹介して治療を行っていただいております。
手術後に下垂体ホルモンが足りなくなることがあり、ホルモン補充療法が必要です。甲状腺粉末(チラージン)、ステロイド(コートリル)、抗利尿ホルモン(デスモプレッシン点鼻)、成長ホルモン注射、性ホルモン注射などが外来で行われます。