脳神経外科手術における術中ナビゲーションと術中モニタリングの有用性とピットフォール
脳神経外科の低侵襲手術において、術中ナビゲーションと術中モニタリングは重要な役割を果たしています。
私が以前准教授を勤めていた帝京大学ちば総合医療センターでは2006年に術中ナビゲーションが導入され手術法が大きく変化しました。
ナビゲーションを使用した144例、術中神経モニタリングを行った77例を対象とし有用性と短所を検討し、日本脳神経外科総会等で口演発表をしましたのでここではその内容を紹介します。
現在私は三井記念病院脳神経外科部長を勤めていますが、この時の経験を元に、三井記念病院でも術中ナビゲーションと術中モニタリングを自在に活用し、開頭腫瘍摘出術を行っており、2019年6月19日三井記念病院地域連携フォーラムで「神経機能モニタリングを使用した脳神経外科手術」の題で講演したスライドもご覧いただけます。地域連携フォーラム


[抄録]
[表題]脳神経外科手術における術中ナビゲーションと術中モニタリングの有用性とピットフォールEfficacy and shortcomings of surgical navigation and neuro-monitoring forneurological surgery
【背景】脳神経外科の低侵襲手術において、術中ナビゲーションと術中モニタリングは重要な役割を果たしている。帝京大学ちば総合医療センターでは2006年より術中ナビゲーションが導入され手術法が変化した。【対象と方法】ナビゲーションを使用した144例、術中神経モニタリングを行った77例を対象とし有用性と短所を検討した。
【結果】ナビゲーションは脳腫瘍摘出術135例、AVM 2例、皮質下出血2例で使用した。術中モニタリングはABR25例、SEP7例,MEP46例, VEP7例, EOM1例, EEG2例, 顔面神経刺激+モニタリング14例, 下位脳神経刺激+モニタリング4例で使用した。ABRは聴神経鞘腫、脳幹血管腫、第4脳室底上衣腫、顔面神経血管減圧術、顔面神経刺激+モニタリングは聴神経鞘腫、脳幹腫瘍、VEPは後頭葉病変、MEPは前頭葉・頭頂葉腫瘍、中大脳動脈瘤・内頸動脈瘤クリッピング、SEPは脳幹腫瘍、内頸動脈内膜剥離術、頭蓋外血管-頭蓋内血管吻合術の際に有用であった。
【考察】脳深部病巣はナビゲーションの深度を変えることでより安全で正確なアプローチが可能となったが、後頭蓋窩病変、脳萎縮が強い症例ではナビゲーション画面上と実際の病変の位置が1~2cmずれることがあり、あらかじめ脳の移動や脳萎縮の程度を考慮に入れて体位の工夫、位置の修正を行う必要があった。電極の不具合等でモニタリングが無効な症例がありモニタリング機器の正確な設置や電極を患者に密着させ剥がれないようにする等モニタリング技術の向上が不可欠と考えられた。
【結論】術中ナビゲーションは脳深部病変の摘出術の際に特に有効であった。術中神経モニタリングは病変の場所により使い分ける必要がある。両者の適切な使用で、深部脳病変へより正確・迅速に到達可能となり、病変の摘出も安全に行えるようになった。