「今日の治療指針2017年版」(ご購入はこちら)p881「脳出血の治療」の項を執筆しました。開業医・勤務医に向けて、最新の脳出血の治療をまとめましたのでご参照ください。
脳内出血の治療
治療のポイント
・脳内出血は急性期の増悪が多く、急性期の適切な管理が、生命・機能予後を左右する。
・血腫の拡大により神経症状が増悪した場合は、血腫除去もしくは減圧開頭術を救命措置として行うことも考慮する。
・患者の死に直結するDNR(蘇生中止)オーダーは、発症2日以内は原則として行なわない。
・早期リハビリ開始・早期リハビリ転院・十分な医療サポートを受けながらの早期自宅退院は機能予後を改善する。

Topic
大規模無作為化比較試験(INTERACT 2)で超急性期における重度の降圧が安全でかつ90日後の機能予後を改善することが示され、脳卒中ガイドライン2015では、ニカルジピン持続静注等で急性期から収縮期血圧を140mmHg未満(以前は180mmHg)に下げるよう勧告された。

病態と診断
平成26年の死亡は10万人あたり26人、院内死亡率15%、退院時の日常生活自立(mRS 0~2)33%。
脳内出血の危険因子は、加齢、高血圧、男性、過量飲酒、総コレステロール低値など。高血圧による細動脈の病理学的変化(血管壊死、小動脈瘤等)は脳内出血の重要な原因で、高齢者の皮質下出血はアミロイドアンギオパチーが多い(女性2.2倍、再出血、多発)。他の原因は、血管奇形、脳動脈瘤、凝固障害、抗凝固療法、脳梗塞、腫瘍、薬物乱用など。
脳内出血の初期診断はCTが有用。高血圧性以外の血管異常の鑑別にはCT血管撮影、MRI・MRAを行い、必要に応じDSAも考慮する。造影CT時のスポットサイン(血腫内の点状の造影所見)が出血増大を示唆する。
治療方針
○A保存的治療
血圧・血糖・体温・頭蓋内圧(ICP)管理、呼吸管理、凝固異常の補正などが重要。発症20時間以内の血腫増大は4割に見られ機能予後と強い相関があり、超急性期の出血拡大の阻止が治療の要である。抗凝固療法中に脳卒中を合併した場合の死亡率は高率で、ワルファリン内服中はビタミンK、FFP投与でINRをできるだけ早く1.35以下にする。ICP上昇が疑われる場合(意識障害、頭痛、嘔吐、重篤な高血圧、頭部CTでの血腫量等で判断)は、過換気、30度の頭位挙上、浸透圧利尿剤投与などで対処する。
R処方例
ペルジピン注 1μg/kg/分 点滴静注で開始し、1~10μg/kg/分で維持
(脳圧上昇時)
グリセオール注 1回200mL 1日2~4回 1時間で点滴静注
○B外科的治療
神経学的増悪を伴う、3cm以上の小脳出血、脳表から1cm未満の皮質下出血は開頭血腫除去術を、脳幹出血、視床出血に伴う水頭症には脳室ドレナージ術を検討する。被殻出血は神経所見が中等症以上かつ血腫量31ml以上は手術を考慮する。
ICPモニターはGCS≤8かつCTで脳ヘルニア、脳室内出血、水頭症所見があれば留置を検討し、ICP<20mmHg、脳灌流圧>70mmHgを目指す。

❢看護・介護のポイント
麻痺を伴う場合は、間欠的空気圧迫法により深部静脈血栓症および肺塞栓症を予防する。弾性ストッキング単独では予防効果はないとされる。