胚細胞腫瘍(生殖細胞腫瘍germ cell tumor)
・本来は生殖器(精巣、卵巣)に原発する多彩な組織像を呈する腫瘍群の総称でこれらがなぜ脳内に発生するのかは不明です。
・全脳腫瘍の約3%で20歳以下にほぼ70%が集中する。平均年齢(診断時)は18歳前後で男性に圧倒的に多い。
・発生部位はきわめて特異的で松果体部(45~60%)、トルコ鞍上部(神経下垂体)、基底核です(5%)。
・胚細胞腫瘍の分類
Aジャーミノーマ(胚腫germinoma):50~60%。若年男に多い。鞍上部>松果体部に多い。胎盤性アルカリフォスファターゼ(PLAP)が陽性。病理ではtwo cell pattern。
B奇形腫(teratoma):20%
C絨毛癌(choriocarcinoma):HCG(human chorionic gonadotropin)陽性。男児に多く偽思春期早発症を生じます。
D卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor):AFP(alpha fetoprotein)陽性。
E胎児性癌(embryonal carcinoma):純形は稀。
・症状
A松果体部腫瘍
中脳水道閉塞に伴う水頭症、四丘体症候群(共同上方注視麻痺=パリノー徴候Parinaud’s sign、アーガイル・ロバートソン瞳孔Argyll Robertson pupil=対光反射は消失するが調節に伴う瞳孔収縮は保存)を呈します。
B鞍上部腫瘍
尿崩症、視力・視野障害、下垂体前葉不全が3徴です。
・腫瘍マーカー:一部の症例では血清中あるいは髄液中のアルファー胎児性蛋白(alpha-fetoprotein; AFP)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)あるいはHCG-βが病期に一致して増減します。
・胚腫(ジャーミノーマ)では放射線治療が効きます。
・悪性胚細胞腫では手術と放射線治療では3年生存率50%以下、5年以上の生存はまれであったが化学療法を加えることにより治療成績は向上しつつあります。
治療法:
Good prognosis群(germinoma+HCG germinoma):RTX+CARE(carboplatin+etoposide)4週ごとに3回。
Inetrmediate(teratoma, germinoma+teratoma) :RTX+CARE4週ごとに3回。腫瘍残存例は2次療法としてICE(ifosfamide-cisplatin-etoposide)を3回。
Poor prognosis群(choriocarcinoma, yolk sac tumor, embryonal cartionoma, 血清HCG 2000mkI/mL以上、血清AFPが2000mIU/mL以上):1次治療としてICE1回行う。その後salvege surgery(可能であれば)RTX治療後6~12週休止。IC6週ごとに2回施行。2次治療としてICE3カ月ごとに5回施行。ICEの骨髄抑制を考えRTXは局所先行しその後全脳照射。