脳血管奇形とは、生まれつき脳の血管の一部に脈管系の構造としての障害がある状態です。
つまり通常の血管は動脈が枝分かれをして毛細血管となり、毛細血管で栄養分や酸素を組織に与え、二酸化炭素や老廃物が再び静脈側の毛細血管にはいり、毛細血管が合流して静脈になって心臓に戻るように循環しています。
この脈管系の構造に異常があり正常の循環ができなくなるのが血管奇形です。
通常の血管の役目(酸素や栄養分を肺や胃腸から脳に送って、二酸化炭素や老廃物を肺や肝臓腎臓に送る役割)をはたせないため脳梗塞の原因になり、動脈の高い血圧が静脈にかかることにより脳出血をおこすことが可能性があります。
脳血管奇形は、毛細血管がないため動脈の圧力が静脈に直接かかるもの(脳動静脈奇形)、動脈、静脈と独立した血管の異常な塊を作るもの(海綿状血管腫)、動脈がなく静脈だけが存在しているもの(静脈奇形)に分けられます。
特に動静脈奇形は、動脈がナイダスとよばれる異常な血管網を介して静脈に流れ込むため、脳出血の原因となります。
海綿状血管腫も脳動静脈奇形ほどではないですが、脳出血をおこすことがあります。
動静脈奇形も海綿状血管腫も一旦出血すれば手術を検討する必要があります。
静脈奇形は脳出血や脳梗塞を起こすことはなく治療は必要ありません。
脳動静脈奇形=AVM(arterio-venous malformation)
・男女比は1.1〜2.0対1で男に多くみられます。
・人口10万人に0.9〜1.2人の発見率。くも膜下出血の1/6〜1/10に見られるといわれます。出血発症が60%、てんかん発症が20%。
・脳動静脈奇形にたいしては、血管内手術で血液の流れをおさえた上で、切除術を行います。血管内手術を行うが、小さいもの(直径2.5cm以下)では放射線療法(ガンマナイフ)が有効なことがあります(ガンマナイフ後2年後に80%以上が消失する)。
海綿状血管腫:血管撮影では異常ないことが多いが、脳内に桑の実状の血管の塊があり、時として多発し、出血することがあり、その場合は切除術をおこないます。
小脳虫部の海綿状血管腫に対する脳溝を利用した手術に関しては「開頭腫瘍摘出術の工夫(脳溝を利用する手術)」を御覧ください。
静脈奇形:動脈には異常ないが、異常静脈が血管撮影で見られます。出血するのは稀であり経過観察のみでいいと考えられています。